「必殺仕事人」(正しくは必殺シリーズというべきであるが・・・)というドラマ(時代劇)がある。
悪い奴らに理不尽に命を奪われた人の家族、あるいは関係者が精一杯のお金を手に「仕事人」に敵討ち(仕事)を依頼して、それを受けて「仕事人」の面々がそれぞれの独自の「技(わざ)」で成敗していく、というものである。
昭和の時代、まだ時代劇が大河ドラマ以外でもレギュラー番組としてそこそこ放送されていた頃には、必殺は毎週、時事ネタを絡めたストーリーで楽しませてくれた。
放送当時、主役の藤田まことさんが演じる中村主水(なかむらもんど)の表向きの、のんべんだらりとした「昼あんどん」が裏の顔である仕事人として悪人(往々にして上級の役人などのお偉いさんなどのことも多い)を一刀両断にやっつけるところがカッコよかったりした。
その他の仕事人たちも、それぞれの表の仕事の道具などを活かしてやっつける仕組みとなっていて、通常の時代劇とは一線を画した独自の路線だった。
2007年からは東山紀之さんを主役とした、いわば「新世紀の」必殺がスペシャルとして復活した。
2009年にはレギュラー番組としても放送されたが、その後は主にお正月期にスペシャルとして放送されている。
今年は1月8日に「スペシャルドラマ 必殺仕事人」(2023)が放送された。
必殺シリーズとしては50周年となり、新世紀の必殺シリーズとしても15年という永きに渡り続いてきた作品の最新作だ。
内容は鬼面風邪(きめんかぜ)という新種で治療薬のない流行り病をめぐり、お助け金を稼ぐために養生所(病院)が医者と一緒に感染者の数を増やしていて、最近の新型コロナウィルスとその給付金詐欺をモチーフにしているような展開が。
また、後半では、それまで善人で患者思いだった医者が、治療薬作りに行き詰まり経済的に追い詰められていたところに、薬を完成した弟子が調合を持って来ると、自分の名で広めるのがいいと言いくるめ、自分が作り上げたとして手柄を取り上げる。その後にはその自身の功績と利益を守るために弟子を殺してしまう。観ていると善人から悪人に変わっていく様子が伝わってきて人間の弱さをも実感させていた。
また、これらのすべての背後で糸を引いている悪徳役人がいるところも、お決まりながらさすがである。
大きな流れとしては、おおむね予想(期待)の通りであるが、仕事人たちが、そう多くもない報酬から自分の分け前を取り「仕事」に向かうところから、それぞれが仕事を果たす流れの痛快さ(だけでもなかったが・・・)は相変わらずで胸がスッとする爽快感がある。
最後には自宅に帰る東山さん扮する渡辺を嫁と姑がコミカルに迎えるというホッと気が抜けるおまけが緊張感を一気に解きほぐしてくれる。
「時代劇」というものが、ほぼ大河ドラマだけになってしまった感のある昨今であるが、これからも「必殺」はつくり続けてくれることを願う。
そしてテレ朝系以外の局も知恵を絞って、視聴者が見たくなるような時代劇を制作してくれることを望む。
なぜなら時代劇は殺陣などを含め、日本の文化でもあると思うから。
簡単に失われるとは思わないが、薄れていきつつあるのではないか思う。
杞憂であればいいが。
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